あるばとろす廻転おべるたす

詩を書いてます。

青い風が吹く

君の涙をさらう

悼む人の声

愛していると伝えたよ

瑠璃唐草が揺れたもの

凍えるような空気を共に

月のない夜に願いをかけよう

手放すものを書き出して

妄執も情愛も愁傷も

興味さえ湧かない

理解を拒んだ男はとうに忘れられた

あまりの喜ばしさに思い出せない

一度でも心を許した罪悪だ

陽射しも当たらないところに押し込めたまま

瞳に映った君の世界で

描いたのは救済だ

亡霊もいないところになら

君は安心できるだろう

同情か憐憫か

信仰は自由であるのに

君はもうなにも見えない

ひとりにもなれない

緑鉄色のたてがみをなびかせて海のうえを歩く太陽は朱なのにここは冷たく透き通っている鏡のような月が降りそそぐ宝石を煌めかせてそれにぶつかった君は交通事故に遭うくらいの確率だと云った黒猫が舐める牛乳の甘い香り傷んだ林檎すべて灌ぐ雨を仰ぐ夜を駆けるグロリア

声を聴くことはなかった

さまようたましいをつかまえて壜に詰めた

青白く光っていていまのところ出口を求めているようには見えない

昼は液体になり乳白色でとろりとしていた

発光はしない、匂いもない

一昼夜ながめたあと夜に放すと

たましいはしばらく漂ってから消えた

れもん色の空を見ていて

閉じ込めたたましいは言葉だったと気付く

声にならずに言いそびれたことが本体から抜けて光る

抗議もない、憐憫もない

かたちのないものを言葉にしても言葉もかたちをもたなかった

閉じた眼に光が浮かぶように

刻まれる 見えないかたちで

答え

言葉を探している

耳障りのいい

小気味いい

言葉を探している

痛いのを避けながら

なのにぶつかりながら

言葉を探している

あの日間違えた言葉を

無かったことにするために

答えを求めている

問いをねだって

呪詛を吐いて

弾き出す

どうなりたかったのか

どうしたかったのか

なにを望んだのか

言葉はただあるだけで

自分が意味を見いだしているだけ

求めて夢見ているだけで

与えられることを拒む

君が求めているのは影響を与えることで受けることじゃない

ねえ

あの日の言葉を

正しいものにするための言葉を探すのはやめて

君の弱さを

堅固に守る錠を叩き壊す

そんな言葉を叫べ

まだいたい

傷のかたち

知らなければ自分が傷ついていることもわからなかったのに

気付いてしまってからやたらといたむ

知っていればもっと早く処置できたものを

照らされなければ知らなかったものを


傷のかたち

治らないうちにさわるから治らないんだよ

でもかたちがわからなければ治しかたもわからない


傷のかたち

治そうという気持ちと

癒える時間と

適切な治療

あとになって浮かび上がるかなしみ

詩人

最高潮から書くのだから

詩はたのしい

詩はくるしい

詩ははげしい


まどろみのなかで聞いたメロディを拾ってきて

言葉にしてしまう

音は明文化され誰にでも見えるようになる

空中に浮かんだ文字を見て

詩にしてしまう

それは読んだ人が各々呼び起こす幻影になる


最高潮から始まるのに最高潮で終わるから

詩はたのしい

詩はくるしい

詩はまぶしい

詩はたましい

詩はおびただしい