眠りから醒めたら
雨が降っていた
眼を開けたら
ライブ会場で、それは拍手の音だった
歌手に向けられた
その雨音は
ベースのストリングスを滑り落ち
観客の涙をさそった
歌手の歌は静かに湖面を揺らすようなそれだのに
その声は
はじめて聴いた音を
思い出させた
音を紡ぎ、空気を揺らし
しばしの間が空き
聴衆の耳に届いて
音楽になった
その歌は
言葉でなく
曲でもない
雨のよう
響いている
ユーピテルの歌声
銀河を覆えない暗雲が
どうして
鏡の中の人を連れてゆく
彼が歌うのは物語だった
それは雨だった
だけど鏡の中の人の涙を
つくるものではない
暗雲ではない