あるばとろす廻転おべるたす

詩を書いてます。

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

夜を抱く

さっきコーヒーで満たした胃が空になったよう かすれた喉からかろうじて出たのは風だった 鼓膜をとことこと何かが走る 一駅の感覚はやたら長いのに眠ることもできない電車の中 正解しか答えたくないまま 閉ざしていたら言葉を失くした 誰がどうなっても空も…

浄土

いまは呼ばなくなった名前で 人を呼び 土地を呼ぶ 振り返った男 桜が咲く度に思い出す 罪は雪に似ていること 嘘にしてしまった言葉がこだまする 忘れられた音色が響いている夜に いまは呼ばなくなった名前 振り返った男の影

夜の闇を駆ける

方向音痴(わたし)の悪いところはろくすっぽ方角を確認せずに歩き出してしまうところだ 夜の街を泣きながらさまようと獣道のすぐ横を通り抜けたときを思い出させる あれは帰り道がわからない恐怖と似ている 誰もいない日曜日の夜は 言葉が無力になる 好きな…

黄泉路

あの日間違えた言葉は わたしの中に沈殿している 言葉は宙に弾けて消えたのに 誰かに確実にぶつかったのに澱のようだったのに 凝って鉛になった 吐き出しても苦しくて 結局見捨てられずに取りに戻るぶつかった誰かは痛かっただろうか それともかゆくもなかっ…

ここに眠る

雨が降っているからかなしいのだと思いたい 死者には安らぎを祈る 生きている人間にはやり方がわからない好きな人がアキレス腱を切ったり 父親に勘当されたり 家賃の振り込みを忘れたり 週に一度のご褒美を増やしたりして レバーのようにじっとりしている そ…