あるばとろす廻転おべるたす

詩を書いてます。

2019-01-01から1年間の記事一覧

無言

朝もやの中で無言の鉄骨がむき出しになった君の魂を見下ろしている帰るところがなくたって刺さり続ける鉄骨

私の

切れた糸 頭痛薬 貝殻 椿油 私にとってなぜか悲しいもの

凝り

何者かになりたい でも何者かにならなくても私だよ 生まれたときから私だよ それかいろんなものがより集まって時間が凝って私になったよ

スローガン2

漂っていたことばをつかまえた 別に誰宛でも、もちろん私宛ではなかったけれど 勝手に受け取った そんなこともあるのだと思った 今日投げた言葉が誰かに届くことも 思いもよらぬ誰かが受け取ってくれることも

スローガン

誰かに聞いてもらうとして その誰かがわからないままで歌い始めている それは誰にも届かない? 伝えたいことばをそっくり受け取れないなら 聞いても仕方のないことなのか? 伝えても意味がないのか? 意味がないのか?

知恵熱

風邪薬を飲んだら熱が出ると 僕ははじめて知りました 同じものを志す人が割といること 僕ははじめて知りました 似たような経験や傷を持つ人がそれなりにいること 僕ははじめて知りました ついで 風邪薬を飲むだけでは風邪は治らないとか 同じものを志してい…

スタクラ! にて

夕暮れが終わった船着き場で響くヴァイオリンと汽笛 星の瞬きとピアノ協奏曲 あれは灯台だった 夢の中で南十字星になった

自然

夜の色からつくったインクで書いた小説を 寝る前に読んでいたら日に日に夜が短くなってついにはページを開くと朝になる 太陽に照らされた海の底でねむるイルカたちも食べているという星影で書いた詩は誰も読めない 足りないのは明るさなのか暗さなのか 音楽…

めまい

崩れ落ちそうになる帰り道 これ以上歩けないと立ち止まっても 誰も気が付かない信号待ち 殴られる前に殴っていったい何になる 言葉でだって拳でだって変わらない 殴られる痛みを恐れて殴った痛みをすぐに忘れる 崩れ落ちそうになる帰り道 これ以上歩けないと…

初恋の人

覗きこんだ鏡の中に 未来の自分の姿が映る 過去にみていたそれより痩せた顔 過去になった未来の自分に 近づいた分遠ざかる現在の自分の笑顔はあの頃もこんな風だったろうか

歌声

くちなしの花が咲いていた道で旋律が氷になっててのひらのなか溶けた 生み出されないもの 感情の袋小路 目を閉じたままの朝 すこし嗄れた声 透き通っていた涙 あなたは愛されるためといった 色づいた光の中に私はいない 記憶の中にも くちなしの花が咲いてい…

写真

時期が来れば 血が私を呼ぶという それは逃れられない積雪に 似ているとすでに呼ばれた 姉が言っていた 私を抱く父親の顔 もう思い出せない

脱出失敗

先に何があるのか すこし見当がついたけど 帰りたいと願えなかった だから行くところもなかった 覚えられない手紙の宛先 正しさを求めて彷徨った 伝えたいことも当然無かった 星は読めないから数えることしかできなかった どうやっても自分でしかないんだよ …

傷のかたち

コピー用紙で切った指に滲む血は どちらかというと洗い流すときの方が痛い だからいま君が流す他の人たちには見えない血も 洗い流すときの方が痛いのだろう 傷のかたち 自分のだって見たくもない 誰かに笑われる方がたまらないのだと言って拳を叩きつけたテ…

伝言

トパーズを探しに夜を飛び出した少年の持つ傘の柄に埋め込まれている願い事がコビレゴンドウの鼻から背中に流れて海を渡り結晶し星になって降り注ぐ それはテディベア作家の家の郵便受けにも届くだろう マーマレードの瓶の中のブックマークを探してくれと伝…

灯籠

広くて狭い部屋にいた母の 面影がライラックの木蔭に 揺れて木洩れ日が廻る グレープフルーツを詰めた ワインの函に紛れ込む子ども 隠れ鬼の途中でうたた寝 仔猫が通りすぎていく 十二月の暦をめくる前に くじらの尻尾めがけて ジャンプした星々が夢見た あ…

自画像

変わらない 君の自画像 変わりたいと叫んだ 君の残像 白い犬が好きなこと タピオカが苦手なこと 動悸が最近激しいこと 筋トレを続けていること 何かを伝えるのが下手なこと 変えられない 君の自画像 変わらなかった 君は虚像

母の幻影

母の幻影をみる 遠い日の交差点 畦道 透明の犬 迷いこんだ子猫 泣き声 裏庭ひとりぼっち 母の幻影を追う コーヒースタンド 改札口 焼きうどんの味 包丁を持ち出したのは春だった アロエだけが生き残った

視覚情報

隠せないもの 電子マネーの残高 くじらの尻尾 本当は眉間に溢れている君の表情 隠したいもの 会社内での恋心 悪口ばかりのSNSのアカウント 低い身長 目にみえないものを見ようとしているうちに 目を凝らさなくてもわかるものを見ないふり 隠したいんじゃなく…

世界が帰ってきた!

お帰り世界! 帰ってきたんだね 気付かなかったよ 君は ずっとそこにあったのに 僕たちは我が身かわいさに 世界 君を見捨てた 僕たちはみんなを取って 世界 君を取らなかった お帰り世界! 僕たちは君を見捨て気付いた 「みんな」こそ 絶えるべきだったと ご…

私の永遠

先生との出会いは永遠でした 永遠は途方なく続くこと 限りなく続く時間それは先生あなたでした 永遠を淋しさだと云った 一瞬のきらめきを永遠の言葉にし伝わらないものを伝えようとする 言葉だけのかなしい人間を 音楽や絵や歌で彩るように 言葉だけで幸せな…

融雪

心臓に見紛う紅葉(もみぢば) 凍った月が照らしていた 鏡のような水面に眠れぬ夜 頼れるものはそんな両手 いたわりを得られるわけでないのに望んだ赤 終演、あの人の望み 白い衣を欲していた 暗闇に溶かすために緋を備えて 染まる靄 融雪 どこかで 待つあの…

頭痛薬

ぜんぜん速くない特急で 海まで薬を運びます 道中眠りこけぬよう お供に古歌をさよならの声がする 細波に砕けない音が 頭痛に似た鈍さが 君の最大のかなしみになるさみしくなれないから さみしいのか さみしいから さみしくなりたいのか

我君を愛す

月のない夜 一瞬の煌めき 頬を伝う雨涙を導に、 死者は夜に探し 星をみつけた海に呑まれて 消え去った文字 書いたものはくさび 無くしたものを悼む 涙が海に溶け その人を導く うたのように

シロップ

ジンジャーエールを飲み干した その痛みは 紫陽花の棘のようだった星のない夜 コピー機を探してさまよった コンビニエンスストアの灯火遠くにきたら からだを置いてきてしまった 映画館で魂を ヴィオラの音をえたいの知れぬかなしみ 交わした歌の美しさ サー…

朝と夜

固く閉ざされた扉から 光が洩れている 朝のことだ固く閉ざした扉から 光が洩れている 夜のことだせまくてくらい場所に押し込んだ あの日の夕陽 忘れてしまいたかった 傷むのは世界のせいじゃないもくれんの花をみた 朝のことだ そんな女とであった 夜のことだ

水族館

さっき飲み込んだ星が いま喉に支えて苦しみの 顔をするジンベイザメその大きいからだを揺らしながら 眠るように回遊する 30センチの壁の向こう蒼色に染めた手をかざし 空に身を浸す いまわたしはジンベイザメの 腹の中とけてひとつになる 海の色、すべてを…

耳鳴り

「耳鳴りがするの」 サイレンのような高い音 ぴーらーぴーらー(耳鳴りの音)鳥の鳴き声のようなギリシャ語 かなしみを表すことばを 叫んでいたアリストテレス「もう聞こえないの」 耳鳴りが止んだという君の 耳にはぽうっと痺れる ような音が残ったという君の…

ゆびさき

雨粒のように ピアノの音が 溢れるようにゆびさきから 思いが伝わると思った 金色の陽射しのなか言葉にしても 気持ちは伝わらない気がした 言葉が伝われば 気持ちだってそれだけのものなのに響く子猫の眠り 幻影を追いかけていた 捕まえてしまえば 霧散する…

永遠の世界を生きる 機械だった かたまりヴァイオリンの音があふれていた 小鳥がうたっていた こもれびが揺れていたそれもすべて 夕闇のなかに あの色は あの人のヴァイオリンの音永遠のかたまり 繰り返す記憶を泳ぐ まるで生きているように 機械、死なない…