あるばとろす廻転おべるたす

詩を書いてます。

2019-01-01から1年間の記事一覧

紡いで

あの日途切れた音を あの人が拾って弦にした 金色の弦に奏者が抱きかかえるように鳴らすチェロは ちょっと大きくてちいさいヴィオラ ただ大きさだけの話あの日途切れたヴァイオリン 音色はあふれているのに その人から紡がれないから 聞こえない飛び回る金色…

路面凍結

凍った地面を踏みしめて まだ眠さに閉じそうな 瞳が見つけた昨夜舞ったぼたん雪 いま地面を覆う薄氷 きみが昨日までに流した涙に似て夜のうちに隠したから 凍ってしまった気持ちの一部を 僕は踏みにじって進むけど きいろいあひるは抱きしめる

ラストインブルー

たゆたう薄暮 紺色の空 私は永遠をみる胸を軋ませる色 青く染まると からだ全体で夜みたい雨の色のようなコーヒーの苦さに顔を しかめた 宵闇に似ている すべて寂しさの色

ジュリエット

あなたはだあれ 私じゃない あなたでもないあなたがあなたでなくなっても あなただけど 私の知ってるあなたじゃない私の知ってるあなただろうと そうじゃなかろうと あなたはあなただったけれど あなたはねえ どうしてあなたなの?

恋してるのと少女が云った 恋とは何かと訊ねたら いつも寂しさを抱えることよと 笑って云った

寂しさ

こぼれたのは 涙だったか 言葉だったか永遠のような距離や時間を あなたのとなりで一瞬の十年を体感したら 眠気さえ飛ぶ 2月の暖かさが 悲しみを呼ぶ

ユピテル

眠りから醒めたら 雨が降っていた 眼を開けたら ライブ会場で、それは拍手の音だった歌手に向けられた その雨音は ベースのストリングスを滑り落ち 観客の涙をさそった歌手の歌は静かに湖面を揺らすようなそれだのに その声は はじめて聴いた音を 思い出させ…

大切なひとをなくした そのひとの声を わたしは知っていたそのひとは 大切なひとだった 彼女はわたしを知らない愛しているよ そう呟いたつもりだった 彼女はずっとわたしと ともにそばにいたよ きっと忘れられぬ声を 千尋の海を泳ぎ 空を夜を渡る

夜離れ

常夜から逃れて 常夏へ刹那の煌めき 物語は雨 木星の歌声 ユピテル、歌ってる常夜から逃れて 永久へ忘れてしまった話 思い出すことと許すこと forgive,forget,forever 思い出せないから忘れられないのだその苦悩は一過性の腹痛となにがちがう 君の夏休み、ま…

夕闇

あの日きいた あの歌、また聴かせて そう云ったのは金色の中歌えない自分は自分じゃない そんな叫びを閉じ込めて 約束した蛍の光に浮かび上がる兎 闇の中、彼の人の扉 わずかな隙間から洩れた 歌声、私には聞こえない闇の中に浮かび上がる兎 光の中、開かれ…

どこまでも深く続く夜の 星の海に沈んだからだを 轢いていく鉄道に乗った人が 吹いていた口笛をめぐる永遠彼女が連れてきた音は 永遠の色彩を孕んで グロリアの中に溶けて 漂うどこまでも深く続く夜の 星の海に浸したからだは 轢いた鉄道のレールにぶち撒か…

永遠

朝の中に眠る永遠に 青がきらめく 雨がさざめく 朱がきえてゆく散り際のばらが 悼むのは 夜に溶けた魂魄 金色に光る朝の中に残る永遠に 意味が潰える 海がみえる 駅が広がる 音がこぼれる咲き始めたビオラの たたえる雫は 見舞う人からもらった 時のきらめき…

先生への手紙

ゆびさきから生まれたことばがボールペンを滑って音色を伴いながら落ちてくる きみはいつも冥王星にいてめったに顔を出さないのにたまに宇宙をただよう列車に乗り込んでは 星を集めて夜をつくっている 夜の作り方は黒猫と時計の盤と文字があればできるとわら…

夜空に瞬く

身を焦がす音を聴いた 貫かれたのはわたしだった 恐ろしくて立ち止まってしまった あの人は遠く 唇は戦慄いて くすぐったいような 喉元を抉られたような 背を撫でる夜風よりもやさしく、突き刺した なみだ 燃え尽きそうに持て余す自分を 紺碧を舞う蠍に殺さ…

さよなら世界

歌わない歌手になりさがった月の終わりに 世界がちいさく悲鳴をあげたのを聴いた 世界というのは 風が吹かない場所のことだったが 彼女は 何でもないと笑うばかりで 水星の光のように静かであった世界が終わる日も 人類が生きているのも だれかが歌わないの…

わたしの好きなもの

すみっコぐらしが好きだ。とりわけとかげが好きだ。とかげのどこが好きかと云うと、まず出生。名前はとかげだが、じつはきょうりゅうの生き残りである。悪い人に見つからないようにとかげのふりをしてひっそりと暮らしている。貴種流離譚である。とかげの故…

冥王星ハニー

きみの中にはだれがいるの だれもいない空白に 君は座っている 君の飼ってるウミガメは 肉眼にはみえない星をその 眼に宿してかぷりと 君の手を食んでいた 君は終電車を見送って 夜のような色のインク瓶を飲み込んで 死んだかの人の魂を 冥王星まで届ける大…

夜の闇

少女は鍵盤を見つめている 遠い日に兄が弾いていたピアノは未だ 閉じられたまま紅い絨毯の下に ねむっている本の中に閉じ込めた 瓶入りの水にだけ映る 先生の宇宙よりも深い藍色 わたしの血よ

楽譜

下の円形劇場を映した鏡は雨に濡れる座席の粒に反射して輝き太陽のように眩み右に向けて指差した少年が示す猫の鉤尻尾の影を消す光になり得る金色の双眸が私の心臓を撃ち抜いて散った血が彼女の小指につながる赤い糸の先の肋骨を埋めたその墓に楽譜を捧げた。…

詩を

書いていた詩置き場です。 エッセイなんか載せたいです。