あるばとろす廻転おべるたす

詩を書いてます。

2020-01-01から1年間の記事一覧

青い風が吹く 君の涙をさらう 悼む人の声 愛していると伝えたよ 瑠璃唐草が揺れたもの 凍えるような空気を共に 月のない夜に願いをかけよう 手放すものを書き出して 妄執も情愛も愁傷も 興味さえ湧かない 理解を拒んだ男はとうに忘れられた あまりの喜ばしさ…

緑鉄色のたてがみをなびかせて海のうえを歩く太陽は朱なのにここは冷たく透き通っている鏡のような月が降りそそぐ宝石を煌めかせてそれにぶつかった君は交通事故に遭うくらいの確率だと云った黒猫が舐める牛乳の甘い香り傷んだ林檎すべて灌ぐ雨を仰ぐ夜を駆…

凍える虎 眠れないでいる子ども はにかみ 明るい夜 所信表明 月面自動車 はなうた さびた夜 懇願と請願 聞き入られない 明確な拒否 聞こえないふり 凍える虎を手にかけた 人の手に指はなかった 虎を殺したのは 虚無だ、虚無だ

声を聴くことはなかった

さまようたましいをつかまえて壜に詰めた 青白く光っていていまのところ出口を求めているようには見えない 昼は液体になり乳白色でとろりとしていた 発光はしない、匂いもない 一昼夜ながめたあと夜に放すと たましいはしばらく漂ってから消えた れもん色の…

答え

言葉を探している 耳障りのいい 小気味いい 言葉を探している 痛いのを避けながら なのにぶつかりながら 言葉を探している あの日間違えた言葉を 無かったことにするために 答えを求めている 問いをねだって 呪詛を吐いて 弾き出す どうなりたかったのか ど…

まだいたい

傷のかたち 知らなければ自分が傷ついていることもわからなかったのに 気付いてしまってからやたらといたむ 知っていればもっと早く処置できたものを 照らされなければ知らなかったものを 傷のかたち 治らないうちにさわるから治らないんだよ でもかたちがわ…

詩人

最高潮から書くのだから 詩はたのしい 詩はくるしい 詩ははげしい まどろみのなかで聞いたメロディを拾ってきて 言葉にしてしまう 音は明文化され誰にでも見えるようになる 空中に浮かんだ文字を見て 詩にしてしまう それは読んだ人が各々呼び起こす幻影にな…

気付いた

4月はずっと続くのだと思っていた 黒猫に訊いたら残酷だとだけ答えた 時間が それとも私がなのかい 血が滴る 世界は廻る また暦が終わる 停滞しているのに 5月どころかその先もやってくる すべては環だ どこかでつけは払う 変わらないままでいたいと思ったは…

くじらの歌

くじらの歌が聞こえる 坂の途中から 誘うように 桜の花びらが舞う柘榴坂から一本入った方の坂 あの日君が下した決断の 答え合わせをしてくれる歌が聞こえてくる コンビニエンスストアを左手に見ながら駆け上がれ

道化の歌

会場にお集まりの皆様本日はお忙しい中ご来場いただきありがとうございます物語はこのあと皆様がご存知の通り雨が降って虹が出て星空が広がりますその瞬間を何度見ていただきましたでしょうか何度も足を運んでくださった方今日が初めてという方もいらっしゃ…

同じものを見ても

その人をその人たらしめるもの まなざし その先に見ているもの

カーテンコール

彼のことで思い出すのは 夕焼け空を見上げて夜が来るのが怖いと云ったこと でもいまはろくでもないから眠る直前で つまり悪夢のなかということにしていること 彼は死にたかったんじゃない 生きていくのが怖かっただけで それは私もそうだ 布団に入ってすぐ眠…

人生は続く

影ができない人間になった 最近はずっとそんな感じがしている 人生の栄光と挫折 育んだ友情そして決別 恋、破局 伝わらない言葉に絶望した わかりあおうとしてできなかった 人生の必修科目だ あるいは人類の歴史だ 自分だけはそれができると思った業だ 光が…

君が星なら

星って地球から見て隣接してるように見えるけど見えるだけで実はすごく遠いところにあったりする 星はそこにあるのが当然で買うものや手の届くものじゃないからつまりあまり欲しいと思わないものでもある 星はいま見えてももう存在しない場合もあってだから…

新月

くっきりと残っているからまるで傷あとみたいに焼き付いた影 見える星は変わらないけどそれはもう光だけで そのうち消える まだ私の目には映るのにトンネルを抜けた電車に残る言葉 銀河を渡るように 特別急行 君の許まで

補陀落浄土2020

星がひとつ落ちまして 世界はかなりざわついた 眼を閉じなくてもあの星影が まだ瞬いているのに あなたの置いていった指環 どうしたもんかと箱に入れ 星が落ちた日になくなったりしないかと 期待をこめて箱をあけてそっと閉じた まだあった 誰かに選ばれよう…

永遠を溶かした琥珀色の夕焼けに君がついた嘘が輝いている 朝になると透けて見えなくなるけど夕方になればまた光る 変わらずにあるものが私にだってあると思っていた ヴァイオリニストが同情する旋律の中に頑なに張り詰めた夜、苦悩が嘆いている 選んだ結果…

ヴァイオリニスト

君の心に棲む音楽が 君を巣食う鬼になる それは君の心を食い破って 誰かを襲う そんな夢ばかり見る これは執着 血が君を縛り 血が君を音楽に向かわせ 君が血を求めてはいなくても 一体いつになったら君は解放される 音楽の完成? 君が壊れる方が先? 君の心…

空白を埋める

僕の中のからっぽ 僕はからっぽ いままで食べたもの読んだもの たくさん詰めて濾したはずなのに またからっぽになってる 僕の中のからっぽ 僕はからっぽ 生まれたときからある空白 コキュートスに引きずり込むような瞳で 埋められないものでそのまま 愛する…

涙が落ちる音

誰かに書いてもらった手紙の下書きを さっき燃えていたアンタレスのめだまの中に落としてしまった 持っていたくなくて 哀切をもって響いたオーボエ 愛していると呟いた男が 抱いていた白いカラーの花束 こだましている 流れ星が通る音 ヴァイオリンのE弦を滑…

自由落下

人生は落下だ 人間に自由意思があると信じている君も おそらく落下している まばたきの速度で 趣味 恋 生業 家事 庭の剪定 選びとって捨てる 吸収するもいつか排出される 残るのは記憶と言葉 巡礼をするために生まれたよう いつかのだれかの記憶をたよりに …

貴嬢と私

占星術とかそういうもので だいたい同じ星巡り 災難は似た時期だったけど 業は違う 好きなものは似てる 感じ方はちょっと違う 考え方はかなり違う 境遇も似てるとはいえない 同じ場所で同じ光を浴びて同じ影を縫った 変わらないことで希望をもったのが貴嬢 …

夕暮れと鉄骨

夕暮れに鉄骨が浮かぶ場所で金色の電飾が君の涙を縁取っている 宵の明星が教えてくれた帰り道は大人になって忘れてしまったからランタンを灯して辿ろう 左から三番目の丸太の角を右折 猫の集会所を越えて 星が眠る場所へ

星屑の行方

雪と音の欠片が踊る舞台で 星屑は消えた 君の声も以前とは違うように響いて 記憶の中の君を塗り替えてしまい私は彼を失った 星屑の行方はヴァイオリン工房にいた職人だけが知る あそこは光がねむる場所だからと口元に立てたひとさしゆび カーテンコールのあ…

「オレンジ色」

殴られたようなアイシャドウをひいた女が言う 「裁けぬから許せぬのです 許せぬのは裁けぬからです」

「思い出」

父に捨てられた日のことを思い出している 窓にぶつかる雨を眺めるように どんなに記憶を手繰り寄せても 思い出せない自分の表情 まるでそこにいなかったかのように ひとしきり思い出したら 父の顔も忘れてしまった 耳の中に残った声も

川越のくま

川越のくまは めがねをかけて ペットボトルを振り回し 東京でパッケージエアコンを売っている ふだんは野菜を育て 朝摘みのブルーベリーを食べ 庭を整え などしている 酒には強く ハイボールを好み まったく酔わない 川越のくまは 旅行を好み各地に出掛ける…

夜を抱く

さっきコーヒーで満たした胃が空になったよう かすれた喉からかろうじて出たのは風だった 鼓膜をとことこと何かが走る 一駅の感覚はやたら長いのに眠ることもできない電車の中 正解しか答えたくないまま 閉ざしていたら言葉を失くした 誰がどうなっても空も…

浄土

いまは呼ばなくなった名前で 人を呼び 土地を呼ぶ 振り返った男 桜が咲く度に思い出す 罪は雪に似ていること 嘘にしてしまった言葉がこだまする 忘れられた音色が響いている夜に いまは呼ばなくなった名前 振り返った男の影

夜の闇を駆ける

方向音痴(わたし)の悪いところはろくすっぽ方角を確認せずに歩き出してしまうところだ 夜の街を泣きながらさまようと獣道のすぐ横を通り抜けたときを思い出させる あれは帰り道がわからない恐怖と似ている 誰もいない日曜日の夜は 言葉が無力になる 好きな…