あるばとろす廻転おべるたす

詩を書いてます。

2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

涙が落ちる音

誰かに書いてもらった手紙の下書きを さっき燃えていたアンタレスのめだまの中に落としてしまった 持っていたくなくて 哀切をもって響いたオーボエ 愛していると呟いた男が 抱いていた白いカラーの花束 こだましている 流れ星が通る音 ヴァイオリンのE弦を滑…

自由落下

人生は落下だ 人間に自由意思があると信じている君も おそらく落下している まばたきの速度で 趣味 恋 生業 家事 庭の剪定 選びとって捨てる 吸収するもいつか排出される 残るのは記憶と言葉 巡礼をするために生まれたよう いつかのだれかの記憶をたよりに …

貴嬢と私

占星術とかそういうもので だいたい同じ星巡り 災難は似た時期だったけど 業は違う 好きなものは似てる 感じ方はちょっと違う 考え方はかなり違う 境遇も似てるとはいえない 同じ場所で同じ光を浴びて同じ影を縫った 変わらないことで希望をもったのが貴嬢 …

夕暮れと鉄骨

夕暮れに鉄骨が浮かぶ場所で金色の電飾が君の涙を縁取っている 宵の明星が教えてくれた帰り道は大人になって忘れてしまったからランタンを灯して辿ろう 左から三番目の丸太の角を右折 猫の集会所を越えて 星が眠る場所へ

星屑の行方

雪と音の欠片が踊る舞台で 星屑は消えた 君の声も以前とは違うように響いて 記憶の中の君を塗り替えてしまい私は彼を失った 星屑の行方はヴァイオリン工房にいた職人だけが知る あそこは光がねむる場所だからと口元に立てたひとさしゆび カーテンコールのあ…

「オレンジ色」

殴られたようなアイシャドウをひいた女が言う 「裁けぬから許せぬのです 許せぬのは裁けぬからです」

「思い出」

父に捨てられた日のことを思い出している 窓にぶつかる雨を眺めるように どんなに記憶を手繰り寄せても 思い出せない自分の表情 まるでそこにいなかったかのように ひとしきり思い出したら 父の顔も忘れてしまった 耳の中に残った声も

川越のくま

川越のくまは めがねをかけて ペットボトルを振り回し 東京でパッケージエアコンを売っている ふだんは野菜を育て 朝摘みのブルーベリーを食べ 庭を整え などしている 酒には強く ハイボールを好み まったく酔わない 川越のくまは 旅行を好み各地に出掛ける…