気付いた
4月はずっと続くのだと思っていた
黒猫に訊いたら残酷だとだけ答えた
時間が
それとも私がなのかい
血が滴る
世界は廻る
また暦が終わる
停滞しているのに
5月どころかその先もやってくる
すべては環だ
どこかでつけは払う
変わらないままでいたいと思ったはずなのに
小気味いい言葉を探すのをやめた
罪ではなく業だったからだ
くじらの歌
くじらの歌が聞こえる
坂の途中から
誘うように
桜の花びらが舞う柘榴坂から一本入った方の坂
あの日君が下した決断の
答え合わせをしてくれる歌が聞こえてくる
コンビニエンスストアを左手に見ながら駆け上がれ
道化の歌
会場にお集まりの皆様本日はお忙しい中ご来場いただきありがとうございます物語はこのあと皆様がご存知の通り雨が降って虹が出て星空が広がりますその瞬間を何度見ていただきましたでしょうか何度も足を運んでくださった方今日が初めてという方もいらっしゃいますねありがとうございます世界のことを他人のことを自分のことさえ変えられる訳がないのに無力感にさいなまれ何のために言葉があるのかと絶望し励ましも慰めもできない我が身を呪うけれどそのあなたのために音楽があり雨が上がり虹が出て星空が広がるのですそしてそれを共に見上げるそれこそが人類最後の夢祈りが実を結び永遠を手にする瞬間なのです
本日はご来場いただき誠にありがとうございました
またお会いしましょう
同じものを見ても
その人をその人たらしめるもの
まなざし
その先に見ているもの
カーテンコール
彼のことで思い出すのは
夕焼け空を見上げて夜が来るのが怖いと云ったこと
でもいまはろくでもないから眠る直前で つまり悪夢のなかということにしていること
彼は死にたかったんじゃない 生きていくのが怖かっただけで
それは私もそうだ
布団に入ってすぐ眠れるならいい人生だ
あれほどの絶望がないからいい人生だ
死にたくなったことがあるからきっといい人生だよ
彼はどうしたかったんだっけ
たぶんすぐに眠れたら
どうもしなくてよかったんだ
君が星なら
星って地球から見て隣接してるように見えるけど見えるだけで実はすごく遠いところにあったりする
星はそこにあるのが当然で買うものや手の届くものじゃないからつまりあまり欲しいと思わないものでもある
星はいま見えてももう存在しない場合もあってだから消えてたってわからない
空を見上げるときもある 見上げないこともある 星があると気がつかないときもある
だからねえ
君は星 なんて
遠くにいかないで
遠くにしないで
彼が絶望のなかで星も見えなくなってもうなにも聞こえなくて安息を暗闇に見出だして
それが彼の星で
だから星だなんて言わないで
君が星だったらなんて考えたくもない