ヴァイオリニスト
君の心に棲む音楽が
君を巣食う鬼になる
それは君の心を食い破って
誰かを襲う
そんな夢ばかり見る
これは執着
血が君を縛り
血が君を音楽に向かわせ
君が血を求めてはいなくても
一体いつになったら君は解放される
音楽の完成?
君が壊れる方が先?
君の心に棲む音楽
それは君の執着
心を食い破られても
君の血が音楽を求める
君の血は音楽と執着でできていて
君は音楽を奏でるときにだけ解放されている
君が生きているということ
それは音楽を奏でるということ
それを聴いた誰かの心をとらえて刻まれるということ
僕はそれを願ってやまない
空白を埋める
僕の中のからっぽ
僕はからっぽ
いままで食べたもの読んだもの
たくさん詰めて濾したはずなのに
またからっぽになってる
僕の中のからっぽ
僕はからっぽ
生まれたときからある空白
コキュートスに引きずり込むような瞳で
埋められないものでそのまま
愛するしかないのに
何かになるんじゃないかと
いつかはそこから何かが生まれるんじゃないかと
富と名声がうまれる泉かなにかと勘違いしてる
ただの虚空
僕の中のからっぽ
僕はからっぽ
自由落下
人生は落下だ
人間に自由意思があると信じている君も
おそらく落下している
まばたきの速度で
趣味 恋 生業 家事 庭の剪定
選びとって捨てる
吸収するもいつか排出される
残るのは記憶と言葉
巡礼をするために生まれたよう
いつかのだれかの記憶をたよりに
どこかにたどり着かなくてはならない使命に
世を過ごす
暇もなく落下している